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弁護士による実務・時事ネタ解説。5分以内でスキマ時間にも読めるような内容で書いていきますよ。

詐欺にあったときに弁護士に相談するべきか?それとも警察に行くか?

 

「詐欺にあった。相手のことは絶対にゆるせない。お金を返して欲しい」と意気込んで弁護士に相談に来る人はかなりの数います。

詐欺にあった場合に弁護士に相談することは有用です。

しかし、とりあえず法律事務所に電話をかけるだけでは依頼を断られてしまったり、無駄に時間がかかって相談料ばかりかかる結果となるでしょう。

 

そこで、詐欺にあったと感じた場合に、どのように行動すべきか弁護士が解説します。

 

 

1 まずは証拠を集めましょう

 詐欺は、刑法において詐欺罪(刑法246条)が成立するだけでなく、民法において不法行為民法709条)となります。

 

(詐欺)
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

 

不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 

 

詐欺とは、簡単に言えば、「人を騙して財産的な価値のあるものを受け取ること」となります。

そこで、弁護士にせよ、警察にせよ、相談する前には、

①人を騙した証拠

②財産的な価値のあるものを渡した証拠

を集めておくといいでしょう。

 

①人を騙した証拠としては、

・LINE

・SMS(ショートメール)

・メール

・電話の録音

・契約書

・騙される前に説明を受けたパンフレット

などが考えられます。

 なんでもいいので詐欺をした人とのやりとりは全て残しておきましょう。とにかくたくさんあった方が有利です。

 

②財産的な価値のあるものを渡した証拠としては、

・振り込みをしたときの明細

・通帳

・領収書

・預かり証

・お金を渡した・受け取ったと書かれたLINE・メール・メッセージ・録音

などが考えられます。

 現金を手渡ししてしまったという方もいるかもしれませんが、その際はその旨を弁護士や警察官に伝えましょう。

 

 

2 証拠を集めたら時系列順に何があったのか整理をしましょう

 

 詐欺というのは、お金を盗まれた場合などと違い、お金を取られるまである程度時間がかかるものです。

 

 そこで、①いつ、どうして、誰に出会ったのか、②いつ、お金を払ったのか、③いつまで連絡が取れており、いつから連絡が取れなくなったのかを整理しておくとよいでしょう。

 相談にいらっしゃる方の中には、自分で時系列表を作成して持参される方もいます。

 そのような方の場合には充実した法律相談ができることが多いです。

 

 

3 相談先を決定しましょう

 相談先として考えられるのは、弁護士警察でしょう。消費者問題であれば消費生活センターということも考えられます。

 

 どこに相談するかは、何をしたいかに関わってきます。

 

 詐欺をした人を絶対にゆるせない、罰を受けてほしい、ということであれば、警察に相談に行く方がいいでしょう。

 罰を受けてほしいということであれば、刑事処分を求めることになりますが、刑事処分を受けられるように進めるためには、弁護士だけではどうしようもないからです。

 もっとも、詐欺被害にあったというだけでは被害届を受理してもらいにくいのが実情です。よっぽど話題になっている事件でもない限りは、簡単に罰を受けさせることはできません。

 (一応弁護士が被害届の提出に同行したり、告訴状の作成をしたり、ということはできますが、このような実情から依頼を受けることは難しいことが多いです)

 

 罰を受けてほしい気持ちもあるが、何よりまずはお金を返してほしい、ということであれば、弁護士に相談に行くべきです。

 警察は詐欺罪として捜査をしてくれるかもしれませんが、お金を取り返すことの手伝いはしてくれません。

 交渉をし、場合によっては裁判を起こし、お金を回収するのはもっぱら弁護士の役目となります。

 

 

4 弁護士に依頼をするか検討しましょう

 残酷なことでありますし、許せないことではありますが、弁護士に依頼をしたとしても100パーセントお金を回収することはできません。

 考えてみれば当たり前のことではありますが、詐欺の場合は以下の特徴があります。

・悪いことをしている自覚があるので、連絡が取れなくなる

・だまし取ったお金は使ってしまう

 

 身近な人に詐欺を働く人はあまりいません。インターネットで知り合い、顔も知らないような人に騙されたという相談はよくあります。よく知らない人を追跡するというのは困難です(方法はありますので、今後記事にしたいと思います)。

 

 また、「貯金をしたい」と思って詐欺に手を染める人は聞いたことがありません。

 買いたいものがある、返さなくてはならない借金がある、手に入れたからには遊びに使いたい……このように、詐欺を働いた人は手に入れたお金を使う傾向にあります。

 つまり、詐欺を働いた人に詐欺を認めさせたとしても、取られたお金がそっくりそのまま残っていることなどほぼないのです。

 仮にお金が残っていたとしても、他の人からだまし取ったお金かもしれません(そのお金から返してもらうことは可能です)。

 残念なことに、だまし取ったお金を一括で返せるような余裕がある人は詐欺を働きません。つまり、相手が反省していたとしても分割返済となるわけです。

 

 分割返済だとしても返してもらうことに価値はあります。

 詐欺被害にあった人の中には、生活が苦しくなったために借金をしてしまう人もいます。通常の給料に加え、分割返済分も収入が増えたと発想を転換し、生活を立て直すことも重要なのではないかと私は思います。

 弁護士としてはそのお手伝いができれば幸いです。