5分で読める法律相談所

弁護士による実務・時事ネタ解説。5分以内でスキマ時間にも読めるような内容で書いていきますよ。

弁護士が考える「弁護士に依頼するべきかどうかの基準」について

 今までに「弁護士に相談するべきかどうか」「どんな方法で弁護士を探すべきか」について記事を投稿してきましたが、今回は「弁護士に依頼するべきかどうか」について弁護士側の視点で書いていきたいと思います。

 

 弁護士の無料法律相談を利用してみたはいいけど、

・着手金は結構かかるし

・弁護士に依頼するなんて初めてで依頼したあとどうなるかわからないし

・絶対に勝てますって言われないと不安だ

などの様々な不安があって弁護士に依頼するのを躊躇する方もたくさんいらっしゃいます。

 

そこで、そんなときにどう決断するべきかについて私なりに書いていきます。

 

1 弁護士じゃなければできない仕事をしてもらうときは依頼するしかない

 刑事事件の弁護人は、ほぼ弁護士しかできません。家族が逮捕・勾留され、起訴されたために弁護人を依頼したいというときには、弁護士に依頼するしかありません。どんな弁護士に依頼するかどうかはまた別の問題ですが、依頼するかどうかというところで悩んでいる時間もありませんので、依頼する弁護士を決めたらすぐに依頼した方がいいでしょう。

 

 

2 弁護士の専門分野については依頼した方がいい

 民事訴訟などは、弁護士を代理人として選任しなくても自ら起こすことができるようになっています。

 自分で訴訟をすることもできますが、相手が弁護士をつけてきた場合には、弁護士相手に裁判をたたかっていかなくてはならないことになります。法律論だけでなく、どんな証拠を集めるかなどの能力では、弁護士は専門家ですから、自分で裁判をする人との力の差はどうしても出てしまいます。

 どうしても勝ちたい、少しでもいい結果にしたい、というのであれば、弁護士に依頼した方が無難です。

 

 ただし、被告(訴えられた側)の場合で、最初から訴状に書かれていることを認めて和解を求めたいというのであれば少し別です。

 たしかに、和解交渉についても弁護士の専門分野ですが、支払金額(総額いくら払うか)や支払方法(どのような分割で払うか)を話し合うだけでしたら、高い弁護士費用を払うより、自分で交渉を進めた方がいいでしょう。もちろん、交渉の方法などを弁護士に相談するのもアリかもしれません。

 

 

3 相手と関わりたくないときには依頼した方がいい

・相手から恐喝を受けている、脅迫を受けている

・DVをしてきた夫と関わりたくない

・加害者と示談で終わらせたいが、自分では会いたくない

などなど、相手と直接に関わりたくないという相談者はたくさんいらっしゃいます。

 

 弁護士に相談するようなトラブルはもはや本人同士では解決できないものがたくさんあります。そんなときに弁護士を代理人として立てることは、結果が良くなることのメリット以上に、自分の代わりになってくれるというメリットの方が大きいことがあります。

 もちろん弁護士以外の人を間に入れることもできます(非弁業者と言われる存在については注意です)。しかし、相手からすれば、よくわからない人が相手の代わりに話をしてくれば警戒してしまうものです。トラブルがセンシティブな内容であるほど、よくわからない人間に対して自分のことを話してくれないでしょう。そうすれば、解決からは遠ざかってしまいます。その点、弁護士というのは社会的に知られている職業ですので、「弁護士です」と言われればよくわからない弁護士であっても相手としては話をしてくれるでしょう。

 

 お金を払ってでも相手と関わりたくないという場合には弁護士に依頼してみましょう。

 

 

4 「弁護士」の名前を使いたいときは依頼しましょう

 自分でお金を返して欲しいと言っているがなめられているのか一向に返してくれないなど、自分ではどうにもならないというときがあります。

 そんなときに弁護士に依頼するのは一つの手です。

 

 誰でもいきなり「弁護士」を名乗るひとから電話があったり、直接会いに来られたり、書面が届いたらびっくりすると思います。人によっては、訴えられるんじゃないかと心配するかもしれません。

 少なくとも弁護士に依頼するということはお金をかけているということであり、そのトラブルを真剣に解決したいと考えていることは間違いありません。

 弁護士を立てられた相手は、きちんと対応しなければ訴えられるかもしれないと思い、今まで自分がやっていたときとは違う反応があるかもしれません(それでも全く対応を変えない図太い人もたまにはいます)。

 

 弁護士以外の人に弁護士を名乗ってもらうのは弁護士法違反の行為になりますので、弁護士を名乗って欲しいからと言って自分で嘘をついたり、弁護士役をしてくれる人に依頼したりする行為は控えましょう。

 

 また、相手に対する威嚇効果だけでなく、弁護士を使うことは周囲の人に対する効果を持ちます。

 例えば従業員が会社のお金を持ち逃げして横領したなどの場合に、会社として対応することはもちろんですが、例えば会社が弁護士を立てて持ち逃げをした従業員への対応を考えていると分かれば、他の従業員としては自分は不正行為をしないようにしようと思うこともあるかもしれません。弁護士を立ててくれる=お金を払って対処してくれるという意味を持つこともあります。

 

 

5 それでも弁護士に依頼するべきか迷ったら弁護士に聞きましょう!

 ここまでの基準を踏まえて依頼したいと思う方もいれば、「でもお金がかかるし…」と思う方もいるかと思います。

 そんなときはその弁護士に依頼した方がいいかを相談してみましょう♪

 

 弁護士に聞いたら依頼した方がいいっていうに決まってるじゃん…と疑う人もいるかもしれませんが、弁護士の立場からしても必ずしもそういうとは限らないと言えます。

 

 例えば、友達に貸した10万円を返してもらうために、20万円払って弁護士に依頼したいと言われても、弁護士としてはそれはやめたほうがいいですよと説明します。

 自分としては絶対に訴えたいから依頼したいと思っていても、弁護士が証拠がないので事件は受けられないと説明することもあります。

 このように、依頼者にとってメリットがないときには、弁護士としても依頼しない方がいいということは伝えます。人によるかもしれませんが、弁護士はたくさんの案件を同時に進めていることもあり、忙しい人が多いので、無理に依頼を受けたいとまで思っていない人もいます。

 

 また、詳しくない分野に関する事件などについては、基本的に受けないことを選ぶことが多いです。相談してみたけどあんまり自信がなさそうな弁護士については、依頼したいと思わないのが普通ですし、依頼するメリットも少ないと思います。不安を覚えるようでしたら、別の弁護士に相談して依頼を検討してみましょう。依頼しないで終わるお客さんもたくさんいますから、相談だけして依頼しないということにあまり罪悪感は抱かなくてもいいんですよ。

 

 依頼して終わりではなく、事件が終わるまで弁護士とはなんども連絡を取ることになります。このひととやっていけるのだろうかと思うのであれば、その弁護士に依頼することはやめたほうがいいかもしれません。